楠見友輔(2024) アンラーニング質的研究:表象の危機と生成変化, 新曜社
質的研究は幅広い分野に拡大し、豊かな実践を生み出している。その一方で、方法は知らず知らずのうちに形骸化し、必要とされる変化を閉ざしてしまう可能性がある。質的研究を「アンラーニング(学びほぐし)」し、問いを創出しつづけるための本。
楠見友輔(2022) 子どもの学習を問い直す:社会文化的アプローチによる知的障害特別支援学校の授業研究, 東京大学出版会
どうして、国際的に知的障害のある子どものインクルージョンは進まないのか?筆者はその背後に潜む、教育における個人主義の存在を指摘する。そして、その問題を克服するために、社会文化的アプローチから子どもの学習を根本的に問い直す。知的障害特別支援学校における長期間のフィールドワークと授業の教室談話分析を通して、筆者は知的障害のある子どもの学習を精緻に分析する。読者は、子どもの学習の奥深さを味わうことになるだろう。最後には、知識社会と呼ばれる新しい時代における教育と学校の在り方が学際的に探求される。知的障害教育の歴史と現状、教育思想や制度、様々な社会科学の理論や現代社会の諸問題が本書の中で大胆に結び合わされているが、丁寧な記述と構成によって初学者から専門家までが楽しめるように作られている。東京大学而立賞受賞。